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2011年2月 3日 (木)

コナン・ドイルのお母さん(3)

 ウォラーとメアリは確かに仲がよく、ウォラーがエディンバラでドイル家に下宿し質素な生活を送っていた年月に、固い絆が生まれていた。その絆がどのようなものか、何年も強い憶測を呼んできた。当然、ある段階でふたりの関係が単なる友情を超えたことを意味している。メアリの末娘の名前はブライアン・メアリ・ジュリア・ジョゼフィンといい、チャールズ・ドイルの娘というよりは、ブライアン・ウォラーの娘だとも思えるそう考えられなくはないが、その可能性は少ないだろう。ウォラーはもったいつけたようなところがあり年齢よりも老けてみられたが、メアリ・ドイルより十五歳若く、コナン・ドイルとは六歳しか離れていなかったのだ。ただ、この問題は克服できたとしても、メアリ・ドイルの人となりについては疑問が残った。不倫は、自分の息子の頭に染みこませた家族の名誉という強い意識の前に厳然と立ちはだかる。(p.p.96-7)

 Clearly Bryan Waller and Mary Doyle enjoyed each other's company and had forged an enduring bond during the Spartan years when he lodged with the family in Edinburgh. The exact nature of that bond has excited considerable speculation over the years. Inevitably, it has been implied that at some stage their relationship progressed beyond mere friendship. There have been also suggestions that Mary Doyle's youngest daughter, whose given name was Bryan Mary Julia Josephine, was in fact the child of Bryan Waller rather than Chales Doyle. While not impossible, the surminse is highly improbable. Though Waller had a grave, self-important manner that made him appear older than his years, he was in fact fifteen years younger than Mary Doyle――and only sixy years older than Conan Doyle. If this objection could conceivably have been overcome, Mary Doyle's nature could not. Such a liaison would have been an affront to the strong sense of family honor she had so successfully instilled in her son. (p.p. 68-9)

 ブライアン・ウォラーとメアリ・ドイルが一緒に過ごすときを楽しんだことは明らかで、エディンバラのドイル家にウォラーが何年も下宿して質実な生活をする間に永続的な絆が生まれていた。この絆の性質については以来ずいぶん色々と揣摩憶測する者がいる。ある段階で単なる友情の域を越えたのだと匂わせる向きがあるのも避けがたいところだ。また、メアリ・ドイルの末娘はブライアン・メアリ・ジュリア・ジョゼフィンと名付けられたが、これはチャールズ・ドイルではなくブライアン・ウォラーの子だろうという仄めかしもある。絶対に違うとまでは断言できないとしても、到底考えられない臆断である。ウォラーは重々しくもったいぶったところがあって年齢より老けて見えたが、メアリ・ドイルより十五歳若く、コナン・ドイルとは六歳しか離れていなかった。仮にこの年齢差が乗り越えられたとしても、メアリの性質としてそんなことができるはずはなかった(←メアリの性質は乗り越えられなかった)。そのような関係は、メアリが息子に教え込んだ家門の名誉を重んずる心に対する侮辱であった。

◇overcomeの訳語は 「克服する」でもよい。ただし「overcomeした結果が結構とは限らない」ことに留意。病気を克服すれば健康になって結構至極である。これはto overcome illnessと英訳できる。しかし本文では「年の差という障害を克服して不倫関係を結ぶ」ので、結構ではない。日本語の「克服」と違って英語のovercomeは価値中立的だ。

◇村上春樹の小説の登場人物が言うように、「個人的に取らないでくれ。Don't take it personal.」 シャーロック・ホームズが言うように、"It is an impersonal thing. 誰がどうだという話ではない。"

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