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2011年3月 7日 (月)

ワトソン博士伝(17)

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 国王陛下の政府はむろんシャーロック・ホームズを忘れなかった。外相のエドワード・グレイと首相のハーバート・ヘンリー・アスキスが揃ってサセックスの寓居を訪れて出馬を請い、ホームズは二年間にわたってあのフォン・ボルクを出し抜こうと骨を折ることになる。名探偵は諜報活動の締め括りに昔のよしみで親友のワトソンを呼び寄せた。1914年に先立つ数年間、二人が会っていなかったことは明らかだ。「この年月で君はどんな風に変わってしまったかな?」とホームズは尋ねたのだった。ワトソンは、ハリッジまで来いというホームズの電報を受けると昔のようにすぐに駆けつけた。二度目の結婚以来羽振りがいいようで、自家用車を持っている。ホームズはワトソンをよく見て「君は昔とちっとも変わらず元気だね」と言った。六十二歳の老兵に対しては大変な賛辞だ。戦争が始まってワトソンがどんな役割を果たしたかは分からない。年齢を考えると海外に派遣されたとは思えない。しかし何らかの資格で、たぶん軍の病院の医師として、お国のために働いたに違いない。

 1763年8月に、ジョンソン博士は友人のジェイムズ・ボズウェルを伴ってハリッジの海岸を歩いた。そこで二人は「抱擁し合い愛情を込めて別れた」という。1914年8月に、シャーロック・ホームズとドクター・ワトソンは月光に輝くハリッジの海を見ながら「むつまじく語り合った」。

「東の風になるね、ワトソン」
「そんなことはなかろう。ひどく暖かいもの」
「相変わらずだねえ、ワトソン。時代は変わって行くけれど、君はいつまでも同じだ」
(ワトソン博士伝完)

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