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2011年3月25日 (金)

ボクサー弾を百発(6)

 シャーロック・ホームズの室内射撃については、いろいろな説がある。英米の銃器専門家の中には、ホームズの使ったのはサルーンピストルではないかとする者もいる。しかし、これは原文をよく読んでみればおかしいことが分かるはずだ。

I have always held, too, that pistol practice should be distinctly an open-air pastime; and when Holmes, in one of his queer humours, would sit in an armchair with his hair-trigger and a hundred Boxer cartridges and proceed to adorn the opposite wall with a patriotic V. R. done in bullet-pocks, I felt strongly that neither the atmosphere nor the appearance of our room was improved by it.
 
 ワトソンは「ピストル射撃は絶対にan open-air pastimeのはずだ」と強調している。もしホームズがsaloon pistolすなわち室内用拳銃を使っているのを見たのならば、そんな書き方をするはずがない。
 ワトソンの軍事経験も無視できない。彼はアフガニスタンで英陸軍制式拳銃のアダムズ1872マークⅢリヴォルヴァーを使って戦ってきたのだ。リムファイアとセンターファイアの違いくらいは心得た上でBoxer cartridgesという言葉を使ったはずだ。
 しかし、サルーンピストルかも知れないと言いたくなるのも分からなくはない。
 ふつうのセンターファイアの強力な拳銃弾を壁に撃ち込んだら、部屋のappearanceはどうなるか?
 
Bullet_hole_in_the_wall_by_bystrm  

 漆喰の壁だったらもっとひどいことになるだろう。愛国的文字を書けるようなきれいな弾痕ができたのは、サルーンピストル並の低威力の弾丸を用いたからだ。そのために特別の細工を……
 部屋のatmosphereはどうか? 部屋の雰囲気(深町訳)ではありません。部屋の空気(延原訳)が正しい。当時の拳銃はまだ黒色火薬を用いたから、百発も撃てば部屋中に黒煙がたちこめてひどいことになったのだ。
 まだ不審なところがある。hair-triggerは……

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