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2011年5月12日 (木)

ボクサー弾を百発(15)

 ヘスキス・ピアソンのコナン・ドイル伝には、バッド医師がsaloon pistolを使ったと書いてある。これはコナン・ドイル自身の間違いを踏襲してしまったのだ。
 サルーンピストルは
(1)小口径のリムファイア弾を発射し
(2)単発である。
「ボクサー弾Boxer cartridges」は、正確には「ボクサー式雷管付き実包cartridges with Boxer primers」であった。雷管はボクサー式かベルダン式のいずれかで、この場合はボクサー式雷管だったというのだ。ところがサルーンピストルのリムファイア弾には、そもそも雷管がない。だから「サルーンピストルでボクサー弾を発射」はあり得ない。
 バッドはドイルに「お前、(家内の)顔を狙って六発撃ってみろ」と言った。単発のサルーンピストルで六発撃つのはどんなものか? 一発撃って銃尾を開けて空薬莢を取り出し、新しい実包を装填してまた撃って――これを六回繰り返すのだろうか。バッド夫人はなかなか度胸の据わった女らしいが、そんなことをされては神経が持たない。六連発の回転式拳銃でパンパンと六発撃ってしまうのなら(そして本当にバッドが言うように弾は当たらないと確信できるのならば)我慢ができるかも知れないが。
 シャーロック・ホームズが部屋の壁に愛国的頭文字を描いたときには、百発の弾丸を要した。単発の拳銃に百回弾を詰め替えるのでは面倒過ぎるだろう。やはり六連発の拳銃とボクサー弾(すなわち狭窄弾)の組み合わせだったはずだ。

Webleys

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