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2011年10月 7日 (金)

シャーロック・ホームズと100人の賢者(1)

 水野雅士氏の本の題は『シャーロック・ホームズと99人の賢者』である。
 旧約聖書のヨシュアから不完全性定理のゲーデルまで99人、シャーロック・ホームズに関わりのある賢者を網羅している。日本人も一人いる。聖武天皇である。T・S・エリオットが入っていないはずがあろうか。果たして79番目の賢者が、「20世紀モダニズムの代表的詩人」、トマス・スターンズ・エリオット(1888―1965)である。
 Murder in the Cathedralと「マスグレーヴ家の儀式」の関係について、私が知らなかったことが書いてある。(博捜は得手ではないのです。)
 
 もっとも有名なのは、彼が1935年に発表した『大聖堂の殺人』で、ホームズ物語の《マスグレーヴ家の儀式》を剽窃したのではないかという議論をめぐって「タイムズ文芸付録」の1951年1月19日号、1月26日号、2月23日号の誌上で、それぞれ活発な書状のやりとりが繰り広げられたことである。(水野氏p.297)

 剽窃!? 私はMurder in the Cathedralを初めて読んだときに「あ、ホームズだ」と思った。1970年代に寝ころんで本を読んでいた日本人に分かったくらいなのだから、初演時のイギリスの観客にはもちろんすぐに分かっただろうと思っていた。だから「1935年6月にカンタベリーでこの劇詩が上演されたときには、すでにアーサー・コナン・ドイルは亡くなっていたが、観客はシャーロック・ホームズの引用に気づいたはずだ。」(『シャーロック・ホームズの愉しみ方』p.123)と本には書いたのである。

 まさか1951年になって剽窃という言葉(英語は?)が出ていたとは。
 しかし、シャーロキアンたちはエリオットが怖かったらしく、直接彼に聞かずに、「ニューヨークのネーサン・ペンギス氏」に頼んでエリオットに尋ねてもらった。「私が『マスグレーヴ家の儀式書』を用いたのは、よく考えてのことであり、十分に意識してのことでした」という御大の回答をネーサン氏を通じてもらって、議論に決着がついたそうである。

Thomas_becket_murder

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