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2011年10月15日 (土)

イギリスの予備校(2)

「モリアーティ元教授の職業」ではarmy coachという英語の用法を検討して、これが「軍人の家庭教師」などではなくて、「陸軍士官学校受験予備校の教師」の意味であることを明らかにした。これは2006年4月に私が本ブログで初めて書いた(ウィキペディアの記述が修正されたのはこれより後です)。
 coaching establishmentはどういう意味か?
 coachingをOEDで引いてみよう。

  1番目は「coachと呼ばれる馬車で旅行すること」という意味である。2番目の意味として

University colloq., etc. Special tuition for an examination, or training for an athletic contest ; special instruction.

 すなわち、coachingという語は、大学などで使われる言葉で、「試験のための特別指導」「運動競技のトレーニング」「特別教育」というような意味である。

 coaching establishmentというのは「予備校」であろう。
「モリアーティ元教授の職業」では、予備校を英語ではふつう「クラマー」と言うことを明らかにしてから、「ほかの試験のための予備校も少しはあったが、クラマーと言えばまず陸士か海兵の予備校で、たくさんあった」(p.251)と書いた。
 ザ・ゲイブルズは、「いろいろな知的職業(professions)をめざして勉強」する学校だから、「ほかの試験のための予備校」だろう。軍人はふつうprofessionsには含めないはずだ。リーダーズ英和辞典には、professionの語義として

1a 《頭脳を用いる》専門的職業, 知的職業, 《一般に》職業《もとは神学・法学・医学の 3 職業を the (learned) ~s といった》

 ホームズがvarious professionsと書いているのは具体的にどのような職業か?(あるいは軍人も含まれていたのか?)
 それぞれの職業にはどのような試験に合格することが求められたのか? 
 ザ・ゲイブルズではそれぞれの試験に備えてどのような教育をしていたか?

 というようなことが分かるとよいのだが、現在の私にはそこまで調べる手掛かりがない。英語の各種注釈を見ても具体的に書いてあるものはない。
 しかし、ザ・ゲイブルズでは、イアン・マードックという教師が「朝食前に代数学の講義をすると言ってきかなかった」というのだ。普通の学校ではなかったことは確かだ。オックスフォードかケンブリッジでボートの大学代表選手だったスタックハーストという男が主宰する小規模の私立学校であって、数学を含む各科のcoachingを行う予備校だったのだろう(駿台や代々木ゼミナールのような大規模の予備校はもちろんなかった)。

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