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2011年10月19日 (水)

イギリスの予備校(4)

 しかし、どういう訳語がよいかは別の問題だ。

Half a mile off, however, is Harold Stackhurst's well-known coaching establishment, The Gables,quite a large place, which contains some score of young fellows preparing for various professions, with a staff of several masters.

 コーチング・エスタブリッシュメントは確かに「予備校」だろうが、そう訳するのがよいかどうか? 予備校と書いてあれば、読者は代々木ゼミナールなどを思い浮かべてしまう。
 先生と生徒が一緒に寝泊まりして勉強する学校を何と呼ぶか? 「塾」である。福沢諭吉(1835―1901)は、安政二年(1855年)大坂で緒方洪庵の「適塾」の塾生となった。塾生は一つの家に寝泊まりして勉強した。江戸時代には蘭学塾でも漢学塾でも「何十人かの青年が一緒に寝起きしている」のが普通だった。(松下政経塾も寄宿制だ。松下村塾は通学制だったらしい。伊藤博文は早稲田政経卒ではない。)
 ステイプルトンの学校も漱石の下宿先の元学校もハロルド・スタックハーストの「ザ・ゲイブルズ」も寄宿制だった。ヴァイオレット・ハンター嬢が校長になった学校も多分そうだ。イートンやハロウのような大規模なものから下宿屋に転業するような小規模なものまで、私塾が英国では学校の主流だった。その中にはザ・ゲイブルズのように試験の準備に特化した予備校もあった。
 訳語は、「ハロルド・スタックハーストの有名な塾、ザ・ゲイブルズ」とするか? やはり「学校」の方がよいだろうか? 慶応出身者が「塾」と言えば慶応義塾大学のことだそうだけれど……

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コメント

オフ会の形で、毎回ホームズ作品を特定して英書講読ができたら楽しいと思いませんか。

投稿: 土屋朋之 | 2011年10月29日 (土) 09時56分

ほんとですね。楽しいだろうな。田舎住まいはつらい。

投稿: 三十郎 | 2011年10月29日 (土) 11時41分

The Oxford Sherlock Holmesの注釈には
similar to a school, but usually on a smaller scale, where pupils are trained intensively
in preparation for public examination or university entrance
とありました。
やはり、代ゼミとTACを合わせたような、しかしながら小規模の教育機関のようですね。

投稿: ころんぽ | 2011年11月 3日 (木) 18時10分

ありがとうございます。大学入試も対象にしていたか。落第する者もいたのだから当然ですね。

投稿: 三十郎 | 2011年11月 3日 (木) 18時14分

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