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2011年11月15日 (火)

シャーロック・ホームズのfrontal development(3)

骨相学  こっそうがく phrenology

頭蓋の外形をみればその人の性格や精神的特性がわかるという学説で,19世紀前半の欧米で大いに流行した。創始者はドイツで生まれウィーンで開業していた医師 F. J. ガルで,彼はイタリアの解剖学者モルガーニの影響下に,幼児や成人の正常脳,各種の病気の人の脳,天才人の脳,動物の脳などを比較研究し,脳内にさまざまな〈器官〉を発見し,これにもとづいて独特の〈器官学Organologie〉を打ち立てた。この理論の概略は,

(1)脳は精神の器官であり,
(2)精神はそれぞれ独立した機能に分かれ,
(3)これらの機能は脳の皮質に座をもち,
(4)頭蓋骨の形と脳皮質の形との相関はきわめて高く,
(5)したがって,頭蓋骨の輪郭と精神機能の特性との間には密接な対応がある,

の5項目に尽くされる。この学説は,脳の異なる部位が異なる機能を持つことを主張した限りで,19世紀後半の実証的な脳局在論に先駆するものとみなされるが,〈良心〉や〈愛〉や〈精神〉まで頭蓋の凹凸から判断するというガル一流の主張は,キリスト教に反するとして当時のオーストリア政府から禁圧され,このため彼はウィーンを去ってパリに移り,開業と研究を続けた。
 彼の説を修正して欧米に広めたのは弟子シュプルツハイム J. C. Spurzheim(1776‐1832)で,師とともに《神経系一般,とりわけ脳の解剖学と生理学》全4巻(1810‐19)を刊行したが,これを1815年に〈phrenology〉と名づけてイギリスに紹介したのはフォースター T. I. M. Forster で,シュプルツハイムも以後この名称を使ったという。骨相学はその通俗的おもしろさから一般人の間でも人気を博したが,いかがわしい利用法がたたって名誉を失墜し,しだいに忘れられていった。なお〈phrenology〉という語はギリシア語のphren(横隔膜)と logos(学)の合成にもとづく語で,かつて横隔膜に精神が宿ると考えられたところから,〈精神の学〉を意味するが,ガルの学説には日本語の〈骨相学〉のほうがはるかにふさわしい。
                    平凡社世界大百科事典  宮本 忠雄

Phrenology_gall

 フランツ・ヨーゼフ・ガル(1758―1828)の創始した骨相学は、19世紀末にはかなり普及していた。
 明治33年(1900年)に38歳の軍医森鴎外が「ガルの学説」という論説を書いて紹介している。このころは左遷されて小倉にいたから、暇だったのだろう。鴎外の要約するガルの学説は

「ガルは脳と頭蓋の関係を説けり。謂へらく、別々の心能、脳の一々の回転に局在す。一々の回転は脳の表面の起伏を為し、又頭蓋の脳に接する部の凹凸を為し、又生人頭Xの凹凸を為す。故に生人の頭Xを検するときは、其一々の心能の発展を知る可きならんと」(「頭X」のXは漢字で「こめかみ」と書くときに「顳X」となるXの字。何と読むのか。意味は大体「頭骨」だろう)
 
 頭のどこが出っ張っているか凹んでいるかを見れば、ある人がどういう能力に優れているかが分かるというのだ。モーティマー医師がホームズの頭蓋骨を欲しがったのは、元祖の真似だった。

「ガルは生人の頭骨の石膏型を作ること四百許なりき。其本能の発展較明なるを選みしなり。又生前の心迹著名なる者の頭骨を検し、時としては、彼石膏型の主人公の頭骨をさへ検することを得たりき。又直ちに脳そのものを検して、これを生前の石膏型に比せしことあり。」

 鴎外の「ガルの学説」は全集で15頁にわたるが、「ガルは其頭骨学図を以て完成の者と為さず、後人補修の余地を残せり。」で終わっている。トンデモ説扱いではない。

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