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2011年11月13日 (日)

シャーロック・ホームズのfrontal development(1)

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1891年4月24日金曜日、シャーロック・ホームズとはじめて相見えたとき、モリアーティ教授は何と言ったか?

「存外知恵のないことをしますな。タマごめしてあるピストルを、ガウンのポケットのなかで弄くるのは、危険な悪習ですよ。」
――新潮文庫、延原謙訳

「きみは思ったより頭の訓練ができていないようだ」ようやく彼は口を開いた。「部屋着のポケットのなかで弾丸をこめたピストルをいじくりまわすなんて物騒な習慣だ」
――早川書房、大久保康雄訳

「あなたは、わたしが想像していたより前頭葉が発達していないな」ようやく彼は言った。「ガウンのポケットの中にある弾の入った武器に指をかけているのは、危険な習慣ですね」
――河出書房、小林・東山訳

『きみは思ったほど前頭葉が発達しておらんようだね』とあいつがようやく口を開いた。『ガウンのポケットの中で、弾丸の入ったピストルをもてあそぶなどは、じつに物騒な習慣だ』
――ちくま文庫、中野康司訳

「ホームズ君、きみは、思ったほど前頭葉が発達していないようだな。ガウンのポケットで弾を込めたピストルをもてあそんだりするのは、じつにぶっそうな習慣じゃないか」
――光文社文庫、日暮雅通訳

そのあげくに『きみは思いのほか前頭葉が発達していないみたいだね』とぬかした。『部屋着のポケットのなかで、装填した銃の引き金に指をかけたままでいるなんて、習慣としても危険きわまりない』
――東京創元社、深町真理子訳

 原文はもちろん

'You have less frontal development than I should have expected,' said he at last. 'It is a dangerous habit to finger loaded firearms in the pocket of one's dressing-gown.'

 翻訳はまだあるが、いくつ見ても同じことだ。
『シャーロック・ホームズの愉しみ方』でも別の例を挙げたように、翻訳者諸氏は、全員同じ一つの間違いか、せいぜい二通りの間違い方をする。不思議だな。
 後半は措く。ピストルを「いじくる」「もてあそぶ」よりは「(引き金に)指をかけている」の方がよいかも知れないが。
 前半の訳が全員間違いです。frontal developmentはそういう意味ですか? 

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コメント

えー、これ間違っているんですか。
The Oxford Sherlock Holmesも「前頭葉の発達」という解釈と矛盾しない注釈を付けていました。
後続のセリフとも平仄が取れているし。
かと言って、お天気の話(「前線の発達」)でもなさそうですし。
む、難しい……。

投稿: ころんぽ | 2011年11月13日 (日) 13時19分

矛盾はしないだろうけれど、別の話です。

投稿: 三十郎 | 2011年11月13日 (日) 16時29分

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