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2011年12月29日 (木)

コントラルト(1)

「どれ、見せたまえ。――フム、1858年米国ニュージャージーの生まれ、コントラルト歌手、スカラ座出演、フム! ワルシャワ帝室オペラのプリマドンナ……歌劇壇引退……ホウ、目下ロンドン在住か、なるほどね! そうしますと陛下、この若い人物と煩わしい関係をお持ちになりまして、問題をおこしそうな手紙をお与えになりましたので、それをいまはとりもどしたいとお望みなのでございますな?」
(延原謙訳による)

 しかし、コントラルトがプリマドンナになるだろうか? 
 コントラルトがオペラの「主役」になることはある。しかし女で主役でもプリマドンナとは限らない。

Profile_nathalie  

  現代の有名なコントラルト、ナタリー・シュトゥッツマンは、リートを歌うことが多いようだ。シューベルトの『冬の旅』のCDがある。これはもちろん男の歌である。第一曲「おやすみGute Nacht」の第一節は

 よそ者としてやって来て
 またよそ者として去って行く
 五月は僕を暖かくもてなし
 数多の花束を贈ってくれた
 あの娘は愛を語り(Das Mädchen sprach von Liebe,)
 母親は結婚のことまで口にした(die Mutter gar von Eh')
 だが今やこの世界は暗澹とし
 道は雪に覆われている
(http://homepage2.nifty.com/182494/LiederhausUmegaoka/songs/S/Schubert/S1763.htm より)

 動画ではシューベルトの『白鳥の歌』から「セレナーデ」を歌っているところが見れる。これも男の歌である。
 http://www.youtube.com/watch?v=jCxdoFQlhqg
 
 この人がオペラで主役を張るのはたとえばヘンデルの『ジューリオ・チェザーレ(ジュリアス・シーザー)』のタイトルロールである。
 しかし、言うまでもなくシーザーは男であるから、この場合にシュトゥッツマンはプリマドンナではない。
 これは元来は「プリモカストラート」の役なのである。ヘンデルのジュリアス・シーザーは1724年初演であった。このころのオペラはカストラートが主役のものが多かった。
 フランス革命後は「やはりちょん切ってしまうのはまずい」ということでヘンデルなどのオペラは上演の機会が減った。カストラートがいない場合、ジュリアス・シーザー役は1オクターブ下げてバリトンに歌わせる手もあるが、どうも味が変わってしまう。シュトゥッツマンのように低音に迫力のある男性的なコントラルトがタイトルロールを歌うのが一番よいらしい。
 19世紀末でも事情は同じであった。しかし「あの女」アイリーン・アドラーは、ワルシャワ帝室オペラのプリマドンナだった。やはり女の役をやったはずだ。コントラルトでもシュトゥッツマンなどとは少し違う声だったのだ。 

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