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2013年5月31日 (金)

宮廷人? 娼婦?

 ウィキペディア英語版にリリー・ラントレーはcoutesanだったと書いてあったそうだ。これはウィキが間違っているだけのことだが、念のために英語の講釈。

cour・te・san, -zan  《貴人・金持相手の》高級売春婦; 《中級の》娼婦; 《昔の王侯貴族の》情婦.[F<It=courtier; ⇒COURT]c

 元はフランス語だ。

courtisan(e)  〈男〉_ 宮廷人, 廷臣._

courtisane  〈女〉  遊び女, 遊女, 寵姫(元は古代ギリシヤのそれを示した)

 古代ギリシャの高級娼婦はヘタイラという。
 courtesanという英語は、元来は「宮廷人」という意味(英語では男性女性の区別がない)だから、娼婦のeuphemismに使うのに適当だ。リリー・ラントレーはroyal mistressだったのだから、courtesanと書いてもそんなに大間違いというわけではない。「ウィキに書いてあったから、ジャージー・リリーは高級娼婦だ」などと主張するのがおバカなだけ。

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2013年5月19日 (日)

兵曹か軍曹か

「メッセンジャーです。制服はいま、繕いに出していますがね」
「その前は?」
「イギリス海兵隊計歩兵隊に所属する兵曹でした」
(駒月文子訳)

 "A sergeant, sir, Royal Marine Light Infantry, sir. No answer? Right, sir."

 延原謙氏の訳は「兵曹でございました。海兵軽歩兵隊のな」
 しかし、これは兵曹ではなく軍曹ではないだろうか? 細かいところを突っつくようだが。
 海兵隊とは何か? 日本には海兵隊はなかった。上陸作戦が必要なときは海軍陸戦隊を用いた。
 英米では、陸軍や海軍とは別の組織として海兵隊があった。海兵は軍艦に乗り込むが水兵ではなく操船には関与しなかった。主たる任務は、アボルダージュ(接舷攻撃)で敵艦に斬り込むことだった。植民地で反乱が起きたときも、先ず海兵隊が鎮圧に派遣された。
 海兵軽歩兵Royal Marine Light Infantryというのは、海兵隊が独自に砲兵や歩兵のような兵科を有していたということだ(騎兵はなかっただろう)。現代のアメリカ海兵隊は戦車や戦闘機まで保有している。
 軽歩兵は、普通の歩兵と比べて軽装備の歩兵である。ウィキペディアによれば

現代の軽歩兵は、正規の歩兵に対して軽装備の歩兵という意味で使われる。ここでいう軽装備とは兵士が携行する装備品が軽量という意味ではなく、部隊の編成として正規の歩兵連隊ほどには装甲車両や火砲を保有していないという意味である。

 ホームズの時代には、もちろん装甲車両などはなかった。火砲はどうか? 歩兵砲Infantry Gunはあったかも知れないが、軽歩兵は小銃だけの装備だったと思う。
 海兵隊は海軍とは独立した組織で、階級の呼称などは陸軍式である。
 乃木将軍General Nogi、東郷提督Admiral Togoと陸海軍で呼び方が違う。海兵隊の将官はAdmiralではなくGeneralと呼ばれる。陸軍の軍曹は海軍では兵曹である。英語では軍曹がsergeant、兵曹がpetty officerである。海兵隊では陸軍式にsergeantを使っていた(日本の海軍陸戦隊では兵曹だったはずだ)。これは「軍曹」と訳すべきだろう。

 軍人や警官の位をどう訳するかはむつかしい。
 Inspector Lestradeも本当はレストレイド警部補かも知れない。辞書によるとchief inspectorが警部に当たるのだそうだ。しかし、あまり細かすぎる区別のような気もする。 

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2013年5月18日 (土)

角川版シャーロック・ホームズを読む(5)

『緋色の研究』の初めの方、グレッグソンから来た手紙を読んで、ホームズはワトソンにこう言う。

They have their knives into one another, too. They are as jealous as a pair of professional beauties. There will be some fun over this case if they are both put upon the scent."

 Theyというのはグレッグソンとレストレイドの二人の警部のことだ。ここに出てくるprofessional beautiesとはどういうことか?
 従来の翻訳は、「商売女」のような訳語をつけていて、すべて間違いだった。
 角川版ではどうか。
「……しかも互いにいがみ合っていて、商売敵の女同士みたいに嫉妬心をめらめらと燃やしている」

 グレッグソンとレストレイドは二人ともスコットランドヤードの刑事で、すでに「商売敵の男同士」である。性別を女に変えてどうする?
 英語で読めば「ああなるほどprofessioal beautiesにたとえたのだな」と分かって面白いのに、そこを隠してしまっては困るじゃないですか。全部きちんと訳して下さい。

 professional beautyプロの美人とは、「社交界の花形美女」のことだ、というのは僕がブログに書き本に書いた。

 PB(professional beauty)が「高級娼婦的なもの」だと大分前にナントカ先生が指摘したなどと書いてあるサイトもあるようだが、見当違いだ。PBは高級娼婦でもなければ「的なもの」でもない。ウィンストン・チャーチルのお母さん(米国大富豪の娘で公爵家に嫁入りした)のような名流婦人がPBだったのだ。王妃カトリーヌ・ド・メディシスがプロフェッショナル・ビューティと呼ばれた例も僕は紹介している。
http://sanjuro.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/3-7545.html

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 典型的なPBだったリリー・ラントレーは後年女優になったのだから、いくらか身分が低かったかも知れない。しかし、娼婦ではなかった。それ者ではない。リリーはアルバート・エドワード皇太子にずいぶんお金を使わせたらしい。

「I have spent enough on you to build a battleship.あなたには軍艦を一艘作れるくらい(お金を)出したのだ」
「You have spent enough in me to float one.軍艦を一艘浮かべられるくらい、お出しになりました」(floatをbuildと書いてしまったので訂正)

  リリーはプリンスに服や宝石を買ってもらっただろうし、今では「ラントレー・マナー」というホテルになっている家まで作らせた。しかし、現金をもらうなんてことはしなかった。有夫の貴婦人(田舎地主の夫人だから貴婦人としては下の方)だった。絶対に高級娼婦ではなく、的なものでもなかった。
 高級娼婦がいたのはフランスで、椿姫などがその典型である。こういう女をdemi-mondaineという。demi-monde(半世界)に出入りする女だ。普通のモンド(社交界)では、夫婦が単位である。半世界では、男一人でよろしい。女は椿姫のようなのを調達すればよいのだから。だから普通のモンドに比べて、demi-monde半世界という。
――というようなことは、原文で読めば自然に頭に浮かぶはずで、正典の面白さはそういうところにもあるのだ。
 これくらいのことも知らないで正典を翻訳されては迷惑だ。
 

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2013年5月17日 (金)

角川版シャーロック・ホームズを読む(4)

 悪の巨魁モリアーティ教授の経歴について、ホームズはどう説明したか?
 モリアーティ教授は、二項定理に関する論文によって若くしてさる地方大学の数学教授になったが

Dark rumours gathered round him in the university town, and eventually he was compelled to resign his chair and to come down to London, where he set up as an army coach.

 アーミー・コーチの訳が問題だったのだ。角川版で駒月文子氏はどう訳しているか?

「そこで今度はロンドンへ出て来て、陸軍お抱えの個人教師におさまった。」

「陸軍お抱え」というのはどういうことだろう? 陸軍に雇用されていたのか? 雇用とは少し違うのか?
 グーグルで見ると「おかかえ運転手株式会社」というのがある。「サービス紹介~おかかえ運転手では様々な形で運転を代行いたします」というのだから、僕がこのサービスを利用する際には自分で運転手を雇わなくてもいいらしい。

 しかし、黒い噂が立って大学を辞めざるを得なくなった者を陸軍が「お抱え」にするか?
 個人教師というが、誰に何を教えたのか? 駒月訳で見ると、やはり陸軍の軍人が個人として数学を習ったという風に読める。数学の個人教授を受けるような間抜けが現役の軍人では大英帝国が亡びてしまうよ。

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 ウィンストン・チャーチルは20歳で騎兵少尉に任官したが、1893年(シャーロック・ホームズ死亡説が流れた年)18歳でサンドハースト陸軍士官学校の入試に合格してからは「数学とは絶縁した」。

 アーサー・コナン・ドイルの弟イネスはチャーチルと同時代人だったが、彼はウールウィッチ陸軍士官学校に行った。

The Royal Military Academy (RMA) at Woolwich, in south-east London, was a British Army military academy for the training of commissioned officers of the Royal Artillery and Royal Engineers. (ウィキペディア英語版)

 砲兵と工兵の士官養成の学校だったようだ。ここでは数学が必修だっただろう。二項定理どころか微積分までみっちりと仕込まれたはずだ。しかし卒業して少尉に任官してから個人教師について数学を勉強するなんて馬鹿なことがあるか。数学が必要な兵科(砲兵と工兵)で数学ができなければ、士官学校は卒業できない。

 シャーロック・ホームズを読むのは愉しむためだから、たいていの人は翻訳で読む(僕はたまたま原文で読んでいるけれど)。正典の間違った翻訳を広めてはいけない。角川文庫、責任は重いよ。しかし、『愉しみ方』の存在理由があるというものだ。やはり、乃公出でずんば……

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2013年5月16日 (木)

角川版シャーロック・ホームズを読む(3)

シャーロック・ホームズの能力に関する特徴

十一、棒術、ボクシング、剣術に熟達している。

 シングルスティックが棒術でないことは、ずいぶん前に指摘した。

 今ではウィキペディアに「シングルスティック」という項目があって正しい記述がしてあるくらいだ。
 I田D作先生のお言葉(だんだんよくなる法華の太鼓)を忘れるな。半世紀以上前からの間違いがそのままでは困るじゃないか。

 ところで『シャーロック・ホームズの愉しみ方』に書いてあることはウィキペディアと同じだ――などと言わないように。シングルスティックがどんなものかは、私が初めて書いたのだ。ウィキの記事は当ブログが元なのです。

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 もちろん英国にも棒術はあった。しかし、ロビン・フッドがシャーウッドの森でなら分かるが、シャーロック・ホームズがロンドンで棒術など使うはずがないだろう。

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2013年5月15日 (水)

Sensational Literature

 Sensationalは「通俗」ではなくて「扇情的」である。「犯罪に関係する→sensationをかきたてる」ということだ。
 Literatureは、ここでは文学ではなくて文献である。
 ホームズは過去の犯罪文献をよく読んでいるから、「千の犯罪に通暁していれば、千一番目の犯罪を解明できないはずがない」と豪語できる(角川文庫p.21)のである。
 ブログ筆者は、センセーショナルな文献の代表としてニューゲイト・カレンダーを挙げたことがある。calendarという言葉は『緋色の研究』にも出てくる。

_"You seem to be a walking calendar of crime," said Stamford with a laugh. "You might start a paper on those lines. Call it the 'Police News of the Past.' "
 角川文庫の駒月訳では「さしずめ、歩く犯罪事典だな」となっている。これでよろしい。カレンダーは暦とは限らない。

 sensationalを通俗では駄目だが、literatureを文学としてよい場合がある。sensational literatureで「扇情的文学」くらいか。
 ウィキペディア英語版にSensation novelという項目がある。
http://en.wikipedia.org/wiki/Sensation_novel

The sensation novel was a literary genre of fiction popular in Great Britain in the 1860s and 1870s, following on from earlier melodramatic novels and the Newgate novels, which focused on tales woven around criminal biographies, also descend from the gothic and romantic genres of fiction. Ellen Wood's controversial East Lynne (1861) was the first novel to be critically dubbed "sensational" and began a trend whose main exponents also included Wilkie Collins (The Woman in White, 1859; The Moonstone, 1868), Charles Reade, and Mary Elizabeth Braddon (Lady Audley's Secret, 1862).

『月長石』や『白衣の女』もsensation novelだったのか。さらに

Typically the sensation novel focused on shocking subject matter including adultery, theft, kidnapping, insanity, bigamy, forgery, seduction and murder. It distinguished itself from other contemporary genres, including the Gothic novel, by setting these themes in ordinary, familiar and often domestic settings, thereby undermining the common Victorian-era assumption that sensational events were something foreign and divorced from comfortable middle-class life. W. S. Gilbert satirised these works in his 1871 comic opera, A Sensation Novel.

 エレン・ウッドの『イースト・リン』がsensation novelの最初のものらしい。むかしのイギリスでは高級文学と通俗文学の区別なんかなかった。ディケンズを見よ――と言う人がいるが、これは間違いで、ディケンズよりはるかによく売れた作家がいた。このことは小谷野敦氏がすでに書いている。
 エレン・ウッド(1814-1887)は雑誌を買い取って編集長になり、犯罪や姦通を扱ったきわもの小説を連載して大売れに売れた。ウィキペディア英語版Ellen Wood  http://en.wikipedia.org/wiki/Ellen_Wood_

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2013年5月14日 (火)

角川版シャーロック・ホームズを読む(2)

シャーロック・ホームズの能力に関する特徴
一、文学の知識:なし
二、哲学の知識:なし
三、天文学の知識:なし
…………
九、通俗文学の知識:桁外れ、今世紀のあらゆる凶悪犯罪に通暁している模様。
(緋色の研究25,26頁)

 九が間違いだということは、原文英語を読まないでも訳文だけで分かるはずだ。
 「文学の知識:なし」で「通俗文学の知識:桁外れ」なんてことはあり得ない。通俗文学も文学に含まれるはずだろう。
 このことは大分前にもう書いた。センセーショナルな文学?(1)(2)(3)
http://sanjuro.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/1-17ff.html

 このときは新潮文庫の延原謙訳を検討したのだった。

Sherlock Holmes -- his limits
1. Knowledge of Literature. -- Nil.
2. Knowledge of Philosophy. -- Nil.
3. Knowledge of Astronomy. -- Nil.
…………
9. Knowledge of Sensational Literature. -- Immense. He appears to know every detail of every horror perpetrated in the century.
…………

シャーロック・ホームズの特異点
一、文学の知識――ゼロ
二、哲学の知識――ゼロ
三、天文学の知識――ゼロ
…………
九、通俗文学の知識――該博。今世紀に起きた恐るべき犯罪はすべて詳細に知っている。

「便利屋」を「メッセンジャー」に直したのは偉いけれど、延原さんが半世紀以上前に間違えたところを、まだ間違えていては「新訳」などと名乗る資格はないだろう。
 角川文庫編集部は、もう一度I田D作先生のお言葉の深い意味をかみしめてもらいたい。
「翻訳はだんだんよくなる法華の太鼓でなくてはならない」

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2013年5月11日 (土)

コミッショネア(2)

 コミッショネアが出てくる事件は、もう一つある。
 海軍条約事件である。
 若い外務省職員パーシー・フェルプスが一人残業して海軍条約を筆写している。眠くなってきたので、コーヒーを持ってこさせようとベルを鳴らしてコミッショネアを呼ぶ。コーヒーがなかなか来ないので、下へ降りて行ってみると、コミッショネアは居眠りしていた。揺り起こそうと手を伸ばしかけたときに、頭上のベルが鳴る。

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 コミッショネアは仰天した。
「あなた様がここにいらっしゃるのに、ベルが鳴るとは。いったい誰でしょうか?」
「ベル? ベルがどうした?」
「お仕事をなさっていたお部屋のベルであります」
 パーシー・フェルプスが海軍条約を置いてきた部屋に入ってベルを鳴らしたのは誰だ?

 このコミッショネアは「小使」でよいと思ったから平凡社新書『シャーロック・ホームズの愉しみ方』にもそう書いておいた。

 校閲は何とも言わなかったけれど、差別用語なのかな? 用務員? 
 僕の知り合いで早稲田の全共闘だった人は、小学校の用務員になった。塾や予備校の教師になるのは多かったけれど、用務員とは、ずいぶん思い切ったことをすると感心したものだ。

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2013年5月10日 (金)

コミッショネア

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 コミッショネアが出てくるのは、先ずThe Adventure of the Blue Carbuncleである。(青いガーネットって何だ?)

 この冒険は、ヘンリー・ベイカー氏の帽子から話が始まるのだった。ホームズが「これだけの大頭ならば中身も相当のもののはずじゃないか」とトンデモ説を述べた。

(1889年の)クリスマスのころ、コミッショネアのピーターソンが一杯飲んで帰る途中、ごろつきどもが背の高い紳士をおそっているのを見つける。ピーターソンは紳士を助けるために駆け寄ったが、制服を着ているので警官に見えたらしく、助けようとした紳士も逃げ出してしまい、現場には鵞鳥と帽子が残ったというのだった。

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 この「コミッショネア」をどう訳するか? 僕なら「守衛」にする。『緋色の研究』では駒月訳の「メッセンジャー」がよろしいと言ったが、いつも同じ訳をつけなければならないということはないだろう。

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2013年5月 8日 (水)

角川版シャーロック・ホームズを読む(1)

  "For Mr. Sherlock Holmes," he said, stepping into the room and handing my friend the letter.
  Here was an opportunity of taking the conceit out of him. He little thought of this when he made that random shot. "May I ask, my lad," I said, in the blandest voice, "what your trade may be?"

  "Commissionaire, sir," he said, gruffly. "Uniform away for repairs."

  "And you were?" I asked, with a slightly malicious glance at my companion.

  "A sergeant, sir, Royal Marine Light Infantry, sir. No answer? Right, sir."

  He clicked his heels together, raised his hand in salute, and was gone.

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「コミッショネア」はどう訳せばいいのだろうか、と思っていた。
 延原謙氏の訳では

「君、失敬ですが、ご職業は何ですか?」
「便利屋(コミッショネア)であります。制服はその、修繕(つくろい)に出していますんで」彼はぶっきら棒に答えた。

[カッコ内はルビ]

 グーグルで便利屋を検索してみると、たとえば「便利屋さくら組」という会社が上位に来る。http://benriya-sakuragumi.jimdo.com/「サービス内容」を見ると「草刈り、草抜き、農作業、庭仕事はお任せ下さい。また、遺品整理、引っ越しに伴う不用品処分やハウスクリーニング、住まいのトラブルからリフォームまで、サポートします」とある。
 これはちょっと違うだろう。ホームズの時代にこういうサービスはなかったと思う。
 角川文庫の駒月雅子訳では

「ご職業はなんですか?」
「メッセンジャーです」相手はそっけなく答えた。

 なるほど「メッセンジャー」でよろしいか。コミッショネアを別のカタカタで置き換えるなんてことは思いつかなかった。駒月氏は頭がいいなあ。僕が訳をつけるとしたら、駒月氏の訳語を借ります。翻訳はだんだんよくなる法華の太鼓でなければならない――I田D作先生。

 そもそもcommissionaireとは何であるか? ウィキペディア英語版では

In the UK and some former Commonwealth countries, a commissionaire is a doorman.

 とある。doormanならば、ドアマン、門番、門衛くらいの訳語になるか。
 さらにウィキペディアを見てみると、commissioaireはCorps of Commissionaireに雇用されている者という定義がある。Corps of Commissionaireは1859年にエドワード・ウォルター大尉が退役軍人に職を与えるために設立した団体なのだそうだ。下士官で退役した軍人がコミッショネア隊に入って、メッセンジャーなどの役を務める(門番などとして働くこともある)。制服を着るらしい。
 正典の他の物語にもコミッショネアが出てくるはずだ。どこでしょう?

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