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2013年9月23日 (月)

アーサーとジョージ(1)

『フロベールの鸚鵡』と『終わりの感覚』のジュリアン・バーンズに『アーサーとジョージ』という未訳の長篇がある。
 ジュリアン・バーンズは『終わりの感覚』でブッカー賞を得た。『フロベールの鸚鵡』と『アーサーとジョージ』はブッカー賞にノミネートされたが、受賞できなかった。

Arthur & Georgeはの題材はドイルがインド人弁護士の冤罪を晴らした有名な事件であるが、バーンズはこの事件をアーサー・コナン・ドイルとジョージ・エダルジの幼時から死に至るまでの伝記小説という形で、書き直した。
 ジョージ・エダルジ事件では、コナン・ドイルがパールシー(ペルシャ系インド人)の英国国教会牧師の息子エダルジの冤罪(警察のでっち上げ)を見事に晴らした。一九〇七年のことであった。
 コナン・ドイルの愛妻ルイーズは当時死病であった結核を患っており、ドイルと21歳の美女ジーン・レッキーとの間でプラトニックな関係が始まっていた。ドイルは最善の努力を払ってルイーズを生き延びさせようとしたが、ジーンと結ばれるためにはルイーズが死ななければならなかった。
 このあたりの事情は、コナン・ドイル伝では無視できないはずであるが、ヘスキス・ピアソンのものも含めて従来の伝記では書かれていない。
 ジュリアン・バーンズが、伝記小説という形でこの事件を取りげたのが、『アーサーとジョージ』である。バーンズは、典型的な英国人アーサーとパールーシーの牧師とスコットランド女性の混血だったジョージの対比伝(『アーサー』の章と「ジョージ」の章が交互に現れる)という形を発明し、小説家の特権で探偵小説作家と牧師の息子の内面を描いてみせる。

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