2009年12月 4日 (金)

英語を学べばバカになる(4)

 タイムやニューズウィークを読むために勉強している人の例。アマゾンのブックレビューをコピーしておいたのだけれど、肝心の「どの本のレビューか」が分からなくなってしまった。ともかく、たくさんある「タイムを読むための英語教室」というような本の読者レビューです。

(以下引用)
この本には参った。評者はTIMEやNewsweek、その他の数多くの英文記事を20年以上読んできた者として、告白しなければならない。実は英文記事を100パーセントは理解していなかった。理解していなかったことすら気づかなかった。多少速く読めることで勝手に満足していたのだ。
この本を読んで、その自己満足が打ち砕かれた。そして強力な知識を身に付けた。とくに役に立ったのは9章「前提と焦点」、10章「有意志・無意志」、11章「中間命題」。とりわけ11章の「中間命題」には、目からうろこが全部落ちてしまった。だからNewsweekには、AndであるべきところがButになっている英文があったのか。
もしこの本を手に取ることがなかったらと思うと、ぞっとする。TIMEやNewsweekの英語を心の底から理解したい人は、必ず読むべきだろう。とくに自己満足気味の上級者に薦めたい。(引用終わり)

 どうですか。「英語を学べばバカになる」が正しいことがお分かりになったでしょう。
「理解していなかった」英語を20年以上も読み続けたのだそうだ。分からなければ読むな。
 TIMEやNewsweekの英語を心の底から理解したい? 週刊誌を「心の底から」理解してどうする。アメリカ人なら、ニューヨークの場所を知らなくてもタイムやニューズウィークは完全に理解する。日本人が日本語の雑誌を理解するのと同じだ。そういうものを「前提と焦点」「有意志・無意志」「中間命題」などで武装して読めというのか。
 グローバル馬鹿もここに極まれり。
 英語の「学び方」を間違えるとバカになるのだ。
 正しい学び方? 少なくともバカにならない学び方は、あるでしょう。読む値打ちのあるものを読めばよいのだ。

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2009年12月 3日 (木)

英語を学べばバカになる(3)

 タイムを読んでみることにして、図書館で適当にバックナンバーを借りてきた。

Time_aug102009

 今年8月の時点で「中国は世界を救えるか?」が特集とはどういうセンスかね。私はたとえば三橋貴明氏などの方を信用するけれどなあ。

 まあ、読んでみるか。18頁からChina Flies Highという特集がある。上海の摩天楼の写真付きだ。書き出しは

On a steamy saturday afternoon just outside Shanghai, Zhang Yi is in a blessedly cool General Motors showroom, kicking the tires of the company’s newer models. He’s not there to beat the heat. He drives a small Volkswagen now and wants to upgrade. A middle manager at a state-owned steel company, Zhang has no worries about his job or China’s economy. “Things are still pretty good,” he says. “I have no problem now affording one of these,” nodding toward the array of gleaming new Buicks nearby.

 Zhang Yi(漢字?)という人がどうこうしたという書き出しは、タイムのような雑誌の常套手段だ。日本を扱った記事なら「食品会社に勤めるサラリーマンのヤマグチ・トクゴローは……」というように書く。ヒューマンインタレスト? しかし下品だ。
 英語がまずい。私が編集長なら少なくとも1箇所は書き直させる。just outside Shanghaiとは何だ。仮にjust outside Tokyoと書いてあったらどうだ? 「それはどこだ。そんな曖昧な書き方があるか」と誰でも言うだろう。上海のことは読者がよく知らないからこれで通ると思っているのかな。次の段落

There aren’t a lot of places in the world these days where consumers speak with that kind of confidence. With the U.S., Japan and all of Europe mired in the worst global recession in 30 years, China has shown a restorative strength that six months ago many doubted it had. A devastating slump in exports crippled growth late last year, but on the back of a $586 billion government stimulus program――about 13% of GDP, spread over two years ? China has snapped back. The economy grew 7.9% in the second quarter and will now probably expand 8% or more this year. Evidence of increasing momentum appears almost every day. Factory production has begun to edge up, in part because Chinese consumers continue to spend money at a healthy pace. Auto sales, helped significantly by government subsidies for small-car purchases, hit an all-time record in April and will easily surpass those in the U.S. this year. Overall, retail sales in China this year are up 16%.

 どうも問題だね。8パーセント成長は怪しい。そもそも約56兆円(=$586 billion)の景気刺激策なるものが怪しい、という見方があるのに、知らんぷりをするのか。

    この2段落はChina Digital Times
http://chinadigitaltimes.net/2009/08/bill-powell-can-china-save-the-world/
に引用してあるのをコピーした。
 中国はタイムがこういう記事を書いてくれたのを大いに徳としているようだ。「中国はいつ崩壊するか?」などと書かれてはますます外資が逃げてしまう。アメリカ側にも思惑があって、「持ちつ持たれつ」だろう。
 こういうもので英語を学べばバカになることは間違いない。
 ところが驚いたことに、こういうのを一生懸命勉強する人がたくさんいるらしい。

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2009年12月 2日 (水)

英語を学べばバカになる(2)

(1)駅前またはその他の場所にある英会話学校に通う。
(2)TOEFULやTOEICの点数を上げるために問題集などで勉強する。
(3)タイムやニューズウィークを読めるようになるために一生懸命勉強する。

「英語を学べばバカになる」が当てはまる学び方の代表が上の三つです。一応は学習なのだから、(1)(2)(3)などの活動自体に「頭脳劣化作用」が内在するわけではない。しかし、こういうことをしていると確実にバカになります。
 このうちでは(3)が一番高級そうに見えるのかな?
 しかし、週刊誌を読むために勉強する?
 アメリカ人に日本語を教えるとして、週刊朝日や週刊文春を読ませますか? 
 アメリカの大学院で日本語を学んだくらいでは、週刊誌は読みこなせない。知らない単語が頻出するし、何より固有名詞が厄介だ。
「長嶋茂雄は読売巨人軍の三塁手だった」「工藤静香と荒川静香は女で亀井静香は男だ」「キムタクは金という韓流スターではない」なんて情報を知らないと、よほど語学力があってもチンプンカンプンだ。
 それなら読むな。
 せっかく勉強するのだったら、夏目漱石や小林秀雄や丸山眞男や柄谷行人などを読め。村上春樹を読むのもよい。
 英語の勉強だって同じでしょう。
 タイムやニューズウィークなどは、日本の週刊誌より高級だ、と言われるか?
 そんなことは断じてない。低級だ。読めないから高級みたいに思うだけなのだ。
 タイムは何百万部も売れていて、沢山のアメリカ人が読んでいる。ところが「アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない」(町山智浩)のですよ。

 町山氏の本から引用する。
(琥珀色の戯言http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20081126 をコピーさせてもらった。)
 
「バイブルベルト」とはアメリカ南部から西部にかけて広がるキリスト教信仰の篤い地域。………車から降りずに礼拝ができる「ドライブスルー教会」、ハンバーガー屋の駐車場にチューンナップしたアメ車が集まる「ホットロッド教会」、二つに分かれた紅海やゴルゴダの丘でパターを決める「ミニチュア・ゴルフ教会」、「カウボーイ教会」、「スケボー教会」。ディズニーワールドの近所には聖書遊園地「ホーリーランド」がある。
 伝道師もアメリカンだ。「キリストをパーティに呼ぼう。水をワインに変えてくれるよ」とつまらんアメリカンジョークが売りの「コメディアン伝道師」、逆エビ固めを受けながら「キリストが十字架にかけられた痛みに比べればこんなもの!」と叫ぶ「プロレス伝道師」、「ハートブレイクは神が癒すぜ」と歌う「エルヴィスそっくり伝道師」。
 笑ってばかりいられない。バイブルベルトのフリーウェイ沿いには、こんなメッセージを書いた看板が並んでいる。
「聖書以外を信じるな」
「進化論は悪魔の嘘」
「中絶は殺人」
「ゲイは地獄に行く」
 バイブルベルトには、「福音派」が多く住む。彼らは'80年代以降、急激に政治活動に右傾化し、穏健な地元教会を捨て、TV伝道師の下に統合されていった。3000万の信者を抱えるNAE(全米福音派教会)は、コロラドに2万人収容のメガチャーチ(巨大教会)を持ち、バンドやレーザー光線を駆使したその礼拝はロック・コンサートそのもの。「ゲイは聖書に反する行為だ」と説くNAEの総帥テッド・ハガード牧師は「聖書に従う者の性生活は最高ですよ」と胸を張る。
 福音派は自分の子どもを通常の学校に行かせない。科学を教えられたくないからだ。代わりに福音派だけの大学を作り、聖書に基づく教育システムを作っている。
「この大学の目的はアメリカをキリスト教徒の手に取り戻す戦争の兵隊を養成することだ」福音派大学の創始者ジェリー・フォルウェル牧師はそう語る。「我々福音派は全米の人口の3分の1ほどだが、この国を動かしている」。彼らはバイブルベルトの州では多数派で、78%が投票に行く。「議会を共和党に支配させ、ブッシュを大統領にしたのは我々だ。その力を次はヒラリーに思い知らせてやる」フォルウェルは胸を張る。

「福音派は全米の人口の3分の1」もいるのだ。残りの3分の2の程度も知れるじゃないか。
 ともかく町山氏の本を読んでみて下さい。ほかにも「いかにアホか」の例がたくさんあります。
 こういうアメリカ人が読む週刊誌が高級のはずがない。
 実際に読んでみたか? 読んでみた。やはり低級だ。

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2009年11月27日 (金)

英語を学べばバカになる(1)

 アマゾンの読者レビューでは「バカになる理由はひとことも書いてない」などという声が多い。
 書いてなくてもよろしい。論より証拠。
 読者レビューを書いている人たちは、熱心に「英語を学んで」いるらしいが、読んでみると、ほとんどがバカです。
 英語を学んだからバカになったのか、元からバカだったか。
「英語を学ぶ」ということがバカな連中を引きつけ、彼らは「学ぶ」過程でいっそうバカになって行くのでしょう。恐ろしいことだ。
 ただしここで「英語を学ぶ」とは、たとえば

・英会話学校に通う
・TOEFULやTOEICの点数を上げるための教材を使って勉強する
・タイムやニューズウィークを読むのが勉強だと思って、いっしょうけんめい勉強する

というような学び方の場合を指します。
 いま「英語を学ぶ」というと、たいていの人がそういう「学び方」を思い浮かべるでしょう。旧式のもっとまともな学び方ならバカにならない。

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2009年11月11日 (水)

毛むくじゃらのアイヌ人(7)

Challenger1

"Round-headed," he muttered.  "Brachycephalic, gray-eyed, black-haired, with suggestion of the negroid.  Celtic, I presume?"
"I am an Irishman, sir."

「頭は丸いな」と彼はつぶやいた。「短頭。眼はグレイ、髪は黒い。ネグロイドの気味もある。ケルトと見たが、ひが目か?」
「僕はアイルランド人です」

 アーサー・コナン・ドイルの『Lost World 失われた世界』(1912)。チャレンジャー教授が初対面のエドワード・ダン・マローン記者の顔を見てこう言う。
 ケルト人は現在のアイルランド人やウェールズ人の先祖だ。白人であるが、金髪碧眼で長頭の北方人種と違って、眼はグレイで髪は黒く短頭であり、いくらかネグロイド(黒人)の要素が混じっていると考えられていたようだ。ドイル自身もアイルランド人だ。
 イングランドで主流のアングロ・サクソンはドイツから渡ってきたゲルマン民族だ。これは白人の中の白人で「アーリア人種」ということになっていたらしい。

Morrisaryanrace

  アーリア(英Aryan, 独Arier)という言葉は色々な意味で使うが、1888年にチャールズ・モリスが書いた『アーリア人種』では、後のナチ人種論と同じように「理想的な白人」の意味だったようだ。(上の表紙のイラストは顔面角が実際より大きい、理想化されたアーリア人像)

Arier_nicht_nur_sauber_sondern_rein
 Aryan.  Not only clean but also pure!

 日本人を「アーリア人種」に含めるトンデモ説もあった。日本人は毛むくじゃらのアイヌ人の血を引くから、朝鮮人や支那人と違って白人なのだ!

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2009年11月10日 (火)

カリスマ

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観光カリスマとは、日本の地域観光振興を目的に、特色のある観光地づくりに貢献した人々を選定したもの。
選定は内閣府及び国土交通省が中心となり、観光カリスマ百選選定委員会が選定している。2002年から2005年にかけて100名弱が選ばれた。魅力的な観光資源が乏しい地域での観光振興、疲弊した観光地の復活などを担った多様な人物が選ばれている。
国土交通省は、観光カリスマを講師にして「観光カリスマ塾」を開催、ノウハウの伝授や現場体験、受講者によるワークショップなどを実施し、次世代の観光振興を担う人材育成を行っている。
(ウィキペディア)

カリスマcharisma
元来はキリスト教用語のギリシア語で神の賜物を意味し、神から与えられた、奇跡、呪術、預言などを行う超自然的・超人間的・非日常的な力のことである。こうした能力や資質をもった人がカリスマ的指導者であり、ナポレオン、ヒトラー、スターリン、毛沢東などがあげられる。M・ウェーバーが支配の正当性の類型化にこの概念を用いたために、社会科学における学術用語としてはもちろん、広く一般にも用いられるようになった。ウェーバーは、合理的支配、伝統的支配、カリスマ的支配からなる支配の三類型を定式化した。カリスマ的支配とは、カリスマ的資質をもった指導者に対する個人的帰依(承認)に基づく支配である。真のカリスマは権威の源泉となり、承認と服従を人々に対して義務として要求する。この服従と承認は、指導者の行う奇跡によって強められる。こうして、服従者は指導者と全人格的に結ばれ、信頼と献身の関係が成立する。この支配関係は官僚的手続や伝統的慣習または財政的裏づけに依拠せず、指導者固有のカリスマに対する内面的な確信にのみ基づいている。したがって、構造的にも財政的にも不安定な関係であり、服従者の帰依の源泉であるカリスマの証がしばらく現れない場合、カリスマ的権威は失墜し、指導者は悲惨な道をたどることになる。しかし、カリスマが有効に作用する限り、遠回しの手続を必要としないので、危機的状況や革命的状況に適した支配パターンといえる。(小学館スーパーニッポニカ)

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 英語でもcharismaは意味不明だ。

Riccar_charisma
 カリスマ電気掃除機

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カリスマ大尉? (小振りですな)
  
カリスマ=もてる? 

Charisma006

Yourcharismaquotient

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2009年11月 1日 (日)

パセティック

(海辺のカフカでフェミニズム二人組が大島さんを追求するシーン)
 背の低い女性がそこで初めて口を開く。声は鋭く高い。「あなたの主張していることは結局のところ内容空疎な責任回避、言い逃れに過ぎません。現実という便宜的タームを持ちだすことによって、安易な自己正当化をおこなっているだけです。言わせていただければ、あなたはまさに男性性のパセティックな歴史的例です」
パセティックな歴史的例」と大島さんは感心したような口調で繰り返す。声の響きからすると彼はその表現がけっこう気に入ったようだった。
(19章)

 この「パセティック」はどういう意味か? 大島さんは「けっこう気に入った」というのだけれど。
 パセティックは、「悲愴」「悲壮」だと思っていませんか? 英語では違う。「みじめったらしい」「情けない」「だめな」という意味です。

 チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」があった。あれはpatheticじゃなかったかな。ウィキペディアを見てみよう。

(チャイコフスキーの交響曲第6番の)副題については、日本語訳に関して諸説がある。曰く、チャイコフスキーがスコアの表紙に書き込んだ副題はロシア語で「情熱的」「熱情」などを意味する "パテティーチェスカヤである故に「悲愴」は間違いである、というものであるが、チャイコフスキーはユルゲンソンへの手紙などでは一貫してフランス語で「悲愴」あるいは「悲壮」を意味する "Pathetique" (パテティーク)という副題を用いていたため、一概に誤りとは言えない。ベートーヴェンの悲愴ソナタも作曲者自身によって付けられた副題はフランス語の"Pathetique"である。もっとも、パテティーチェスカヤもパテティークも語源はギリシャ語の"Pathos"(パトス)であり、ニュアンスとしては関連性がある。

 フランス語のpathetiqueと英語のpatheticとドイツ語のpathetischはギリシャ語のpathosが語源だ。ところが英語だけは意味が違うのですね。

 私は前に偶然これに気づいた。ジャック・ニコルソンの『ファイブ・イージー・ピーセズ』という映画があった。

Five_easy_pieces_chicken_salad_sand

 主人公とと女友達がケンカになって、女が泣き出す。男が

"Don't be pathetic!"

と怒鳴る。「おい、メソメソするな!」だ。
 なるほど英語ではそういう意味だったのか。それから気をつけて読んでいるが、patheticを「悲愴」の意味で使った例は見たことがない。まず「みじめったらしい」くらいの意味だ。

 辞書は

pathetic 〔初16c;ギリシア語 pathetikos (敏感な)〕
【形】
1哀れな, 痛ましい(pitiful);感傷[感動]的な∥a ~ story 哀れな物語.
2((略式))〈努力などが〉まったく不十分な, 取るに足りない;救いようのない, ひどい, とても悪い
∥She took three weeks to answer my letter. Isn't it pathetic ?  彼女は3週間もしてから返事をよこした. ひどいと思わないか.
3((廃))感情に影響される[左右される].

 古い英語には1や3の意味で使った例があるのだろう。しかし、2の「略式」が今では主流だ。訳語はもう一工夫する必要があると思う。

 同じギリシャ語の語源pathosから派生しても、英語だけ意味がずれてきたみたいだ。
 WordReference.comというサイトで
http://forum.wordreference.com/showthread.php?t=1517466

Don't be pathetic!
をどう独訳すればよろしいか、という質問が出ている。直訳の
Sei doch nicht pathetisch! でよろしいか?
これに対する答え
Lass die Mitleidstour! (「哀れな真似はやめろ」くらいか?)
 と訳すべきだ、とドイツ語が母語の人が答えて、こう付け加えている。

"pathetic" and "pathetisch" are false friends.
The German word "pathetisch" means excessively passionate.
The Endlish word "pathetic" means bemitleidenswert, erbarmlich.

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2009年10月30日 (金)

ナイーブな肉屋

「君は昔はもっとナイーブだったぜ」
「そうかもしれない」といって僕は灰皿の中で煙草をもみ消した。「きっとどこかにナイーブな町があって、そこではナイーブな肉屋がナイーブなロースハムを切っているんだ。昼間からウィスキーを飲むのがナイーブだと思うんなら好きなだけ呑めばいいさ」
(講談社文庫版上p.84)

  村上春樹は英語にやかましい作家だ。『1Q84』で天吾が使うのは「富士通のワードプロセッサー」であって、「ワープロ」ではない。『海辺のカフカ』の星野君は、「カーネル・サンダース」と言いそうなものだが、正しく「サンダーズ」と言っていた。
   大島さんは、フェミニズム二人組の「ジェンダーgender」という言葉の使い方をたしなめていた。「ちなみにジェンダーということばは、そもそも文法上の性を現すものであって、フィジカルな性差を示す場合はやはりセックスの方が正しいと僕は思います。この場合の『ジェンダー』は誤用です。言語的な細かいことを申し上げれば」
(この場合は、そもそもアメリカ人が間違った使い方をしているわけですが。)

 しかし村上春樹でも間違えるのだから、油断は禁物だ。「ナイーブな肉屋」はnaive butcherとは訳せない。Alfred Birbaumの英訳ではinnocent butcherとしている。「アブドーラ・ザ・ブッチャーはナイーブな肉屋だ」なんちゃって。

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「ナイーブ」というのは何か結構なことのように思っていませんか? そういう意味ではない。要するに「単純で馬鹿」という意味です。

naive
adj. 世間知らずの, 無知でだまされやすい, 単純な, (年の割に)幼稚な, 稚拙な; 純真な, うぶな, 素朴な, 愚直な, 無邪気な, 天真爛漫な
◆It is naive to believe that productivity will skyrocket shortly after the design-automation tools are installed. 
設計自動化ツールを導入して間もなく生産性がうなぎのぼりになるだろうなどと考えるのは, おめでたい限りである.
(ビジネス/技術実用英語大辞典)

 むかし「フランシーヌの場合は、あまりにもおばかさん」というのがあった。naiveというのは、まあそういう意味です。
 グーグルに「ナイーブな」と入れてみると
「ごくせん」出身のイケメン俳優が、初主演作で見せるナイーブな表情http://news.walkerplus.com/2009/1020/10/
 というのがトップに来る。

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「ごくせん」とは何か知らないが、なかなかハンサムな若い男だ。しかし、ナイーブ=ハンサムでもないらしい。高倉健はハンサムだが、ナイーブとは言わない。歳が違いすぎる? 木村拓哉の若いころもナイーブとは言わなかっただろう。
 英語のnaiveは「単純で馬鹿」だが、「日本語のナイーブ」は「繊細で感じがよい」というような意味で使っているみたいだ。
 しかし次などどういう意味だ?

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 グーグルに「ナイーブな」で二番目に出るのは

 あまりにナイーブな鳩山外交

 自民党の山本一太議員がブログで鳩山首相を批判している。この「ナイーブ」の用法は正しい。http://ichita.blog.so-net.ne.jp/2009-10-24
「こと外交政策に関して言うと、鳩山総理はあまりにナイーブな気がする。特に普天間基地移設問題に関しては、毎日言うことがぶれている。これはとても不安だ!」

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2009年10月24日 (土)

理力

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理力があなたとともにありますように!
(理力Forceとは、気とともに中国哲学の根本概念である理の力である。王陽明(1472-1529)は「理は気の条理なり」としている。)

Yoda

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2009年9月18日 (金)

従順なる召使(2)

 手紙の結びにI  remain……と書くのは、『ボヘミアの醜聞』に出てきました。
「あの女」アイリーネ・アドラーがホームズに残した手紙の締めくくりはどうだったか。

……and I remain, dear Mr. Sherlock Holmes,
                                              Very truly yours,
                                       Irene Norton, nee ADLER
.

 大いに感銘を受けたホームズはボヘミア王に「この写真をいただきたい」と言ったのだった。

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 servantの方は手紙ではなく、会話に出てきた。

  "Your servant, Miss Morstan," he kept repeating in a thin, high voice. "Your servant, gentlemen. Pray step into my little sanctum. A small place, miss, but furnished to my own liking. An oasis of art in the howling desert of South London."

 もちろんサディアス・ショルト氏ですね。このあとで彼は坐って、モースタン嬢とホームズとワトソンにアグラの財宝の話を聞かせるのだった。

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 しかし、Your servantはどう訳すればよいか。延原謙氏の訳は

「よくおいでなすった、モースタンさん」甲高くて力のない声で、彼は何度もくりかえし、「あなたがたもようこそ。さ、どうぞおはいり。狭苦しいところですが、私の好みで飾りつけました。この南ロンドンという荒漠たる砂漠のなかに作った美術のオアシスです」

 まあ、こうでしょう。ほかの訳者も似たり寄ったりだ。私も特に名案はない。「あなたの召使」のような訳が出てくる余地はないようだ。

・こういうときにyour servantと口に出して言うのはよほど古風な英語であろう。
・モースタン嬢がいたから言ったので、ホームズとワトソンの男二人だけなら言わなかったのではないか。

 と私は思うけれど、これが正しいかどうか自信がない。やはり外国語は隔靴掻痒だ。(愚妻my stupid wife、拙者 my shabby selfなど、文字通り取るとずいぶん変だが、それと似たようなものか。よく分からん。)

"your obedient servant"でグーグル検索してみると
http://onlinedictionary.datasegment.com/word/your+obedient+servant
のオンライン辞書にこう書いてある。

Your humble servant, or Your obedient servant, phrases of
        civility formerly often used in closing a letter, now
        archaic; -- at one time such phrases were exaggerated to
        include Your most humble, most obedient servant.
        [1913 Webster +PJC]
 
              Our betters tell us they are our humble servants,
              but understand us to be their slaves. --Swift.
        [1913 Webster]

Your humble servantまたはYour obedient servantという言い方は、かつては手紙の結びによく儀礼的に使ったが、今では古めかしいものになっている。一時はもっと大袈裟にYour most humble, most obedient servantなどと書くこともあった。

スイフト(1667-1745)の例文
目上の者が自分はあなたのhumble servantです、などと書いてくることがあるが、なあに、こちらが先方の奴隷であることは先刻承知の上なのだ。

 ガリバー旅行記のスウィフトの時代にはよく使ったというのだ。
 白洲次郎は1920年代のケンブリッジで学生生活を送ったので、若い英国人から見るとずいぶん古風な英語を使うことがあったという。
 マッカーサー宛書簡のYour obedient servantも単に「古風な英語」なのかも知れない。  しかし、「従順ならざる唯一の日本人」だったと聞いていたのに、どうもなあ、という気もする。

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